売るのは製品だけではありません

「クルマだけではなく自分を売る」。これは自動車販売に従事している人であれば一度は耳にしたことがある言葉だと思います。私自身も社会人になりたての頃に、多くの先輩から言われ、そして後輩たちに幾度となく話した記憶があります。

誰しも初めはクルマの良さを感じてもらおうと一生懸命に説明をすることに没頭しまいます。クルマの良さを感じてもらうことはとても大切ですが、それだけでは十分ではありません。販売したあとに快適なカーライフを送ることができる安心感を持ったもらうためには、クルマと同じくらいに自分のこと(店舗や会社を含む)を知って貰う必要があります。

では具体的に「自分を売る」とはどういうことでしょうか?それはお客様が「どうせ買うならこんな人から買いたいよな」「この人と車の話をしていると楽しいな」「この人なら車に関することを任せても大丈夫!」といった気持ちを抱いてもらうことでしょう。こういった信頼や安心の気持ちをお客様が感じでもらえれば、そのお客様とは長いお付き合いができるはずです。

一度このようなことがありました。初めての輸入車を検討しているご両親とお嬢様の3人で来店された新規のお客様でした。これまではずっと国産車しか所有していないこと、初めての輸入車に対する不安が少なからずあること、以前から憧れていた輸入車をそろそろ所有したい気持ちが高まってきたこと、納車後に家族3人で旅行に行きたいと考えていること、初めての輸入車を検討している自分はお店に相手にしてくれるのか等…たくさんの期待と不安が入り交じるそんな状態で来店されました。

お客様は特定のモデルについて興味を持ってらっしゃいましたが私は車両の説明をせず、初めにお客様の期待と不安をひとつずつ聞き出し、それを理解した上で期待をさらに高めて、同時に不安を一つずつ解消することから始めました。その中には自分のセールスとしての経験や、他のお客様とのやり取りを例に挙げてどんなカーライフを送っているかをご紹介しました。また購入したあとについても安心して任せることができることも感じていただきました。
その結果、どうせ購入するならこの人(このお店)から購入したいと思っていただけました。もちろん車両の説明に関しても納得いただけるものとなりました。

余談ですが、注文書を取り交わしたあとにお客様から「クルマの説明はいつ始まるのかな?と思ってたんですよ。」と笑いながら教えてくれました。でもその笑顔から「良い買い物をした」という満足感を感じることができました。