お客様を知ることが、“いいな”という気持ちを育てる

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お客様と良好な関係を構築し、維持・向上させていくためには、まずお客様のことをよく知ることが大切です。

…といっても「そんなの当たり前でしょ!?」と思われるかもしれません。ただ、実際の現場では、この「知る」ということが形式的になってしまっているケースをよく見かけます。

たとえば、来店時のアンケートをそのまま読み上げるような質問ばかりになってしまったり、「何を訊くか」だけを意識して、お客様の返答にしっかり向き合わないまま次の質問へ進んでしまう…これでは、お客様との会話は深まりませんし、本当の意味での信頼関係も築けません。

ただ情報収集するのではなく、お客様のことをよく知るためには「なにを訊くか」「どうして訊くのか」「どのように訊くか」の3つの視点を持つことが大切です。

はじめに「なにを訊くか?」について。たとえば「今どのようなお車に乗っているのですか?」という情報だけでなく、 「今の乗っているお車にどんな思い入れがあるのか?」という話を引き出す。

「気に入っている点はどこか? なぜそう感じているのか?」 「次の車で何を重視しているのか? その理由は何か?」 「その車に関心を持ったきっかけは? 他に気になる車はあるのか?」こうした問いかけを通じて、お客様がどんな暮らしをしていて、どんなことを大切にしているのかが、自然と見えてきます。

次に「どうして訊くのか?」。ときに、お客様に「なんでそんなこと訊くのかな?」と思われてしまうような、意図の見えない質問になってしまうこともあります。「自分自身がお客様を理解する」という目的を明確にし、意図を持ってお客様へ質問をすることができれば、お客様とのコミュニケーションはスムーズになります。こうして得られた情報は、次の「商品の紹介」ステップでお客様にとって最適な提案をするための大きな手がかりになります。そしてもうひとつ。 お客様の考えや価値観に関心を持ち、それを深く理解しようとする姿勢は、 お客様との信頼関係を育てるうえでも、とても大切な要素です。

では、その情報収集を実りあるものにするには、どのようにすれば良いでしょうか?最後に「どのように訊くか?」について。

それは、訊きたいことをストレートに訊くのではなく、お客様の興味・関心を中心に、そこからブレないで質問を組み立てることです。

つまり、限定的な答えを引き出すクローズドクエスチョンではなく、お客様の考えや価値観が自由に話してもらえるような拡大質問(オープンクエスチョン)を意識することが重要です。思い込みや先入観に邪魔されることなく、予断を持たずにフラットな気持ちで質問を投げかけてください。

さらに、質問のフレーズが洗練されていれば、お客様はその意図を汲み取りやすくなり、自身のことを話しやすくなります。洗練された問いかけは、お客様との会話を加速させ、関係性を深める原動力にもなるのです!

では、どのような問いかけがそれに当たるのでしょうか。

たとえば「今回の車選びで、何を一番大切にされているんですか?」 「これまで気になっていた点を、次の車ではどうしたいと感じていらっしゃいますか?」 「このモデルにご興味を持たれたきっかけは、どんなところだったのでしょう?」 「他に気になる車種があるとすれば、どこに惹かれていらっしゃるのですか?」

こうした問いかけは、お客様の“次の車選びのポイント”をお客様自身に自由に話してもらうことができる質問です。訊きたいことをなんの工夫もなくストレートに“訊く”のではなく、 お客様に“自由に話してもらう”ための問いかけを意識することが、とても大切なのです。

また、こうした質問に対するお客様の返答を、しっかりと共感と傾聴で受け止めることも欠かせません。「 表情だけではなく態度、うなずき・ジェスチャーとともに共感する。」「理解を示す言葉を添える 」といったリアクションを丁寧に行うことで、「自分のことを理解してくれている」とお客様に感じてもらえるようになります。

このようなやりとりが積み重なることで、お客様の「やっぱりこのブランド良いよね」だけでなく、「この人になら任せてもいいな」「このお店、なんだかいいな」といった気持ちが高まります。

その気持ちが徐々に高まれば、「商品紹介」や「試乗」のステップがより充実し、セールスプロセス後半の展開にも大きく影響するはずです。

訊きたいことを“訊く”のではなく、お客様の興味・関心を軸に会話を組み立てていく。
お客様が自由に話したくなるような問いかけを意識するだけで、これまでとは少し違う会話が生まれ、関係性も自然に深まっていくはずです。